| 研究代表者 | 京都大学・文学研究科・教授 | |
| 定延 利之(さだのぶ としゆき) | 研究者番号:50235305 | |
| 研究課題 情報 |
課題番号:26K21714 | 研究期間:2026年度~2030年度 |
| キーワード:母語話者の非流暢性、話しことば、言語差、言語教育、音声合成 | ||
この研究は、会話に現れる発話の非流暢性に関して我々がこれまで進めてきた研究プロジェクトをさらに発展させるものです。その前身プロジェクトは、日本語に特化した限定的なものでした。その中で我々がつかんだのは、日本語母語話者の非流暢な発話には、実は整然とした規則性があるということです。また、非流暢性がしばしばよい結果を生むことも判明しました。
これらの知見をもとに我々は、「母語話者の非流暢な発話の多くは、発話のトラブル、失敗というよりむしろ、儀礼的に戸惑ってみせる行動としてとらえられるのではないか?」という着想を得ました。
ここから、「どのような言語の非流暢性が、どの程度、どのような点で「儀礼的な戸惑い」なのか?」「それはなぜか?」という新たな問いが浮かびます。本研究は、これらの問いへの解答を通して、母語話者の非流暢性の謎、さらには発話やコミュニケーションの謎を解明しようとするものです(図1)。
調査対象とする言語としては、さまざまな言語タイプに属する9個の言語、具体的には日本語、朝鮮語、トルコ語、ハンガリー語、シンハラ語、フィンランド語、英語、フランス語、中国語を計画しています(表1)。
これら9言語のうち、話者人口が特に多い日本語・英語・中国語については、集中的な会話調査もおこなう予定を立てています。
これらの言語の多様な非流暢性の発話パターンがそれぞれ、どの程度、発話のトラブルや失敗らしくなく、「儀礼的な戸惑い」らしいかを、さまざまな観点から調査、解明します。非流暢な発話パターンはどんな場合にトラブル、失敗ではないと見なされるのか? それはなぜか? そもそも、非流暢な発話パターンが「儀礼的な戸惑い」になっているとはどういうことなのか? 非流暢性とは何か? 発話とはどんな行動なのか? コミュニケーションとは何事であるのか? 非流暢性に関する調査結果を足がかりに、これらの根源的な謎にも挑みます。
| 言語タイプ | 言語 | |
|---|---|---|
| 主要部後置言語 | 膠着語 | 日本語 |
| 朝鮮語 | ||
| トルコ語 | ||
| ハンガリー語 | ||
| 非膠着語 | シンハラ語 | |
| 主要部前置言語 | 膠着語 | フィンランド語 |
| 非膠着語 | 英語 | |
| フランス語 | ||
| 中国語 | ||
研究の実証性の担保として、得られた知見を第二言語教育に応用する。具体的には、日本語・英語・中国語母語話者の非流暢性を体系的に教える教育法を開発します(図2)。
現在、世界中でおこなわれている第二言語教育では、学習者の非流暢な発話を、訓練されたアナウンサーのように完全に流暢な発話にしようと、流暢な会話の練習だけが設けられています(図2)。しかし、アナウンサーのように流暢に話すことは多くの母語話者にとってさえも容易ではありません。それを学習者に求めるのは酷なのではないでしょうか。本研究では、学習者の非流暢性をなくそうとするのではなく、むしろ、一般の母語話者の非流暢性に転化させる手法を開発します。この手法は言語を問わず実践可能であるため、日英中3言語を越えて、世界の第二言語教育に大きな影響を与えられるのではないかと我々は期待しています。
得られた成果は音声合成にも応用して、母語話者のように非流暢に話す、きわめて自然な音声合成を開発します。音声合成は社会の随所で必要とされており、これに非流暢な要素を加えることで、合成音声を人間の自然な音声にさらに近づけ、円滑な会話をサポートします。この技術も第二言語教育と同様、日英中の3言語を越えて、世界の諸言語の合成音声に影響を与えられるのではないかと我々は期待しています。
本研究は、会話に現れる母語話者の非流暢な発話のパターンを、言語の面・会話の面から調査するものです。そして、どのような言語において母語話者の非流暢な発話が、どのような点で、どの程度「儀礼的な戸惑い」なのか、それはなぜかを明らかにし、母語話者の非流暢性とは何かを突き止めます。
成果を日英中の言語教育に応用し、第二言語教育に新たな視点を導入します。また、日英中の音声合成にも応用し、合成音声をより人間の自然な音声に近づけることで、円滑な会話をサポートするための技術開発に寄与しようとするものです。
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母語話者の非流暢性に関する通言語的・学際的研究と、言語教育・AI音声合成への応用
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