基本データの紹介


途切れ型語頭戻り方式のつっかえの例


「りろ、りろん」


Y!Mobileのテレビコマーシャルから15秒版
「コ、コミコミ」


話し手が単語を発音する際に、単語の途中で、発音をとぎれさせる形でつっかえることを「途切れ型」と呼んでいます。

つっかえた後、その単語の初頭に戻って発音をやり直すことを「語頭戻り方式」と呼んでいます。

このビデオの例では、右側の話し手(女性)が、「りろん(理論)」という単語の途中で発音を途切れさせ(「りろ、」)、その後に語頭に戻って言い直しているので(「りろん」)、途切れ型・語頭戻り方式でつっかえているということになります。

いまの例では、つっかえた後に(「りろ、」)、間髪を入れず後処理が行われていましたが(「りろん」)、当初の発話計画が途絶し、ややあって気を取り直して再び発話に及ぶという場合もあり、両者を区別しておく必要を感じています。

次のビデオは(仮に「コミコミ」が単語であるとしてですが)、「コ」と続く「コミコミ」のように長い間があって「コ……コミコミ」のようになっています。これは、「コ」と言った段階で発話計画が途絶し、ややあって気を取り直して言い直した、と考えられます。

途切れ型続行方式の例

Y!Mobileのテレビコマーシャルから15秒版
「にゃ、んきゅっぱ」


Y!Mobileのテレビコマーシャルから30秒版
「こん、ど」

途切れ型のつっかえの説明は上を参照してください。

つっかえた後に、語頭に戻らず、そのまま当該の単語の残り部分を発音することを「続行方式」と呼んでいます。

ビデオの例は、テレビのコマーシャルで、ふてぶてしそうなネコ(「ふてネコ」と呼ばれています)が廃品回収業者風の口調でしゃべっていますが、魅力的な女子高生に目を奪われて、途切れ型続行方式でつっかえています。

15秒版の方は、2980円つまり俗に「にーきゅっぱ」と言うところをネコだけに「にゃんきゅっぱ」と言うという設定なのですが、女子高生に目を奪われて「にゃ(ん)」と言った時点で発音が止まり、その後で我に返って「んきゅっぱ」と続けています。

30秒版の方は、「今度の」と言うべきところ、やはり女子高生に目を奪われて、「こん」と言った時点で発音が止まり、その後で我に返って「どの」と続けています。

単語を発音するどの時点で途切れが生じるかは、どの時点で発話計画が中断されるか(話し手が女子高生に目を奪われるか)という問題であって、基本的には無制限と言うほかはないというのが現在の我々の考えです。

しかし、撥音「ん」を発したところで中断されるケース(30秒版)の方が、「ん」にほとんどさしかかっていない時点で中断が生じるケース(15秒版)よりも多いだろうと我々は予想しています。
そして、音節を無視したモーラ的なつっかえ方(15秒版)は、そもそも廃品回収業者の宣伝のような「読み上げスピーチ」の場合に限られるのではないかと予想しています。

延伸型語頭戻り方式の例


「きゅうじゅうーきゅうじゅうろく」

話し手が単語を発音する際に、単語の途中で、発音を長く伸ばす形でつっかえることを「延伸型」と呼んでいます。
語頭戻り方式については上の説明を参照してください。

ビデオの例では、右側の話し手が、「96(きゅうじゅうろく)」という単語の途中で発音を長く伸ばし「きゅうじゅうー」、その後に語頭に戻って言い直しているので(「きゅうじゅうろく」)、延伸型・語頭戻り方式でつっかえているということになります。

延伸型続行方式の例


「たからーがいけ」



「リン、パ腺」


Y!Mobileのテレビコマーシャルから30秒版
「パケッット料」

延伸型・続行方式いずれも、上で説明したとおりです。

第1の例では、左側の話し手(女性)が、「たからがいけ(宝ヶ池)」という単語の途中で発音を長く伸ばし(「たからー」)、その後に語頭に戻らず、そのまま残り部分(「がいけ」)を発音しているので、延伸型・続行方式でつっかえているということになります。

第2の例も、話し手が「りんぱせん(リンパ腺)」という単語の途中、「ぱ」の子音(破裂音p)の、口を閉じる部分で発音を長く伸ばし、その後に語頭に戻らず、残り部分(「ぱせん」)を発音しているので、やはり延伸型・続行方式でつっかえていることになります。

このような、つっかえが破裂音や破擦音のところで生じている場合は、途切れ型か延伸型かの判断が難しくなります。
上の「ふてネコ」の例のように、「発話計画が中断され、その後に我に返って気を取り直して発話を続ける」という場合は、途切れ型・続行方式と考えています。

次の例は発話計画が途絶しており、途切れ型と判断していますが、「パケッ……ト料」なのか、「パケ……ット料」なのかは判断が微妙で、上述(途切れ型・続行方式の箇所)の撥音の問題と同様、音節とモーラの問題が関わっています。

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