私が薦めるこの一話

大工原勇人(中国人民大学)

Portrait 第2回投稿作品 2011072 ポリリンさんの作品 「USJのお姉さん」
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作品2011072 の「VR話法」
 落語をはじめ「おもしろい話」は多くが「変わった出来事」(内容)について「それを演じてみせる」(語り方)ことで成立していると思います。
 私が推薦する「作品2011072」はそのような演技性が顕著で、「USJのお姉さん」が突如話し手に憑依し、独特の声と身振りと表情で、「変わった出来事」を再現しだします。
 私にとって、何よりおもしろいのは、その語り方(演技)で、「お姉さんスゲェなぁ」「キャラが濃い人がいるもんだなぁ」と実感せざるを得ない迫力に満ちています。言い換えれば、この作品の鑑賞は「過去に起きたおもしろい出来事についての説明」を理解するというより、「今、目の前で展開しているおもしろい出来事」を目撃するという体験であり、「話し手がやっていることそのもの」がおもしろく感じられます。
 どうやら私たちは「今ここで出来事が起きている」感じが大好きで、それをおもしろがる習性があるようです。たとえば昨年(2016年)は、VR(virtual reality)元年と呼ばれ、「今ここにない出来事」をあたかも「今ここで起きている」かのように体験するための家庭用機器(play station VRなど)の発売が話題になったりもしました。
 VR機器は高くて手が出ないけど、「VR話法」の研究なら無料だぞと自分を慰める今日このごろ。



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